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新しい宣伝のカタチ。私たち消費者は"戦略PR"によって動かされている?

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私たちが数ある物の中から1つの商品を選んで購入する際に"決め手"となるのは何でしょうか。商品の質、自分の好みに合う、はたまたパッケージがお気に入りであったり、他の商品よりも安かったりするかもしれませんね。その"決め手"は人によって様々であるために、商品を販売する企業はその"決め手"となるものを一生懸命作り出そうと努力をします。そのひとつが「広告」です。例えばシャンプーを購入する時、数ある物の中から選ぶのは「有名なブランド」であったり、「CMで見たもの」であったりしますよね。このような消費者の動きは企業が広告を打つ大きな理由です。

 

ところが近年インターネットの普及によって私たちが獲得しうる情報量は膨大になり、その情報の中からある特定の情報を得るということが難しくなってきました。例えば20代の女性の肌に一番効果のある化粧水は何か、という情報を得たい場合、インターネットで「20代 女性 化粧水」と検索しても、あなたが本当に知りたい情報にたどり着くまでいくつものサイトを閲覧し、情報を取捨選択する必要がありますね。このことを逆に企業側から考えてみると、「企業が消費者に向けて与えたい情報を届けるのが困難になっている」「消費者が単なる宣伝では動かなくなっている」と言えます。つまり情報を発信する側も単にCMを流したりするだけでは消費者に知ってほしい情報を与えられずに困っている、という現状があるのです。

 

そこで生まれたのが「戦略PR」という新たな宣伝活動です。私たちはいま、広告よりもこの「戦略PR」によって消費行動を起こしているかもしれません。それでは早速、「戦略PR」とは一体なんなのかを探っていきましょう。

 

 

 

人間を動かすのは「第三者の声」
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一つ例を挙げて簡単に考えてみましょう。ある男Aさんがいたとします。彼が自分で「私は誠実な人間です」と語る場合と、周囲の人間が「Aさんは誠実だよね」と評価する場合、あなたならどちらの方が信用できますか?間違いなく周囲の人の声ではないでしょうか。このように人間は「第三者の声」をより強く信頼する傾向があります。これを先ほどから述べている企業の場合を考えてみると、企業が広告で「とても素晴らしい商品です」と謳うよりも、消費者が実際に使ってみて「すごくよかった、また購入したい」という書き込みがあった方が信用できますよね。いわゆる口コミによる評価はその商品を購入する際の大きな決め手となっているのです。みなさんも何か商品を購入する時や、食事をするレストランを選ぶ際、口コミ等の第三者の声を見てはいませんか?

 

戦略PRでは意図的に第三者の声を作り上げる

このように私たちが第三者の声をより信頼するという傾向を踏まえ、それらの第三者の声を「意図的に生み出す」ことで商品やサービスを宣伝する方法、それが戦略PRです。"PR"とは"Public Relations"の頭文字で、ただ単に一方的な"アピール"とは違い、情報を受信する側の求めるものを発信し、働きかけを行い、その情報を受信する側との望ましい関係を築こうとする活動のことを言います。ここで勘違いしてはいけないのは、「意図的に第三者の声を生み出す」とは、企業が自らの商品をあたかも第三者が書いたかのように見せたり、特定の消費者に口コミを書いてもらったりという類のものではありません。あくまで発信したい情報を、受信する側が求めている形に変形させて伝えるというもの。では実際にどのような戦略PRがあるのでしょうか。

 

強力な第三者「メディア」

実は皆さんが普段生活している中で、最もよく目にし、そして最も信頼できる第三者の声があります。それが「メディア」です。例えばお昼の情報番組であるお店が紹介されていて、有名なタレントの方々がおししいと太鼓判を押していたり、夕方のニュースでは新しいウェブサービスが紹介されていて、コメンテーターの方々が社会はますます良くなりそうですね、なんてコメントしていたりしませんか?テレビ番組に限らず、雑誌では「今売れている話題のスニーカー」や、「おしゃれ大学生の必需品!」といった記事をご覧になるのではないでしょうか。はたまたWebニュースでは「渋谷で大規模イベントが開催、大盛況」なんてタイトルのものありますよね。それらは全て広告ではない、メディアが取り上げた題材になります。そこへアプローチをかけているのが戦略PRなのです。

 

広告とPRの違い

ここで広告とPRの違いを確認しておきます。広告はTVや雑誌等の媒体の中で、広告スペースを企業が購入し、そのスペースを使って自社の商品やサービスを宣伝します。そこには巨額の広告費が取引されており、テレビCMなどでは数億円といった大きな金額が動くこともあります。 それに対してPRは、メディアが視聴者にとって価値がある内容・取り上げたくなる内容を、企業側が提供するという形で成り立っています。つまり、この金額でニュースの数分を使って取り上げてください、という従来の広告のようなスタイルとは違い、「視聴者に届けるコンテンツが欲しいメディア」と「コンテンツを視聴者に届けたい企業」の両者が恩恵を被る形で成り立っているのです。ですので広告とは違って巨額の広告費が必要なくなり、企業はメディアを使って効率よく情報を信頼度の高い「第三者の声」として消費者に届けることができるのです。

 

戦略PRが為す仕事

しかしながらもちろんメディア側もその情報を面白い・視聴者が喜びそうであると判断をしなければ取り上げることはありません。そこで活躍するのが戦略PRなのです。戦略PRでは、そのようなメディア (テレビ・雑誌・ネットニュースなど) が欲しがるコンテンツを模索し、作り出すことを目的とします。例えば、企業がヘッドホンの素晴らしさを伝えたくてもメディアは取り上げることはありませんが、そのヘッドホンが音漏れしないこと・臨場感が味わえることという商品の特徴を活かして、「大勢の観客がヘッドホンを着用し、臨場感あふれる音楽を聴きながら同時にステージを楽しむ。しかし実際の会場は無音の状態。」というイベントを開催したとします。するとこのイベントの面白さに食いついたメディアがこぞってこのイベントを取り上げるのです。メディアは視聴者に面白い情報を届けることができ、ヘッドホンを販売する会社は自社の製品の性能を伝えることができます。こういった「メディアが好むもの」を創作することが戦略PRのなす仕事なのです。

 

ターゲットはメディアだけではない

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この戦略PRはメディアが好むコンテンツを作り上げるだけでなく、情報を消費者に直接届けることをも可能にします。それを可能にするのがSNSなどのサービスであり、その場合の戦略PRのターゲットはSNSのユーザー。例えばある企業がすごくくだらないCMであったり、少しモラルに欠けた映像などを作成したとしましょう。そう言ったコンテンツは特定のSNSユーザーの反応を誘い、瞬く間にSNS上で拡散されます。そうして拡散されたコンテンツは、そういった情報に敏感でないユーザーのもとにも届きます。こうした戦略的なPRによって、企業は莫大な広告費を費やした場合と同等の知名度の上昇を獲得することができたり、伝えたい情報そのものを届けることを可能にしたりするのです。

 

今後の展開

このように戦略PRは新しいモノの宣伝手段として定着しています。一見すると広告よりも信頼できる情報を低コストで発信することができるため、今後打倒広告として台頭してくるかもしれません。しかしながら一方で、先に述べたように消費者が獲得しうる情報が肥大化し、消費者にとって第三者の声すらも届かなくなってしまえば、戦略PRも衰退の道をたどる他ありません。そうして情報量がさらに増し、消費者自身が情報を選択しなければならなくなった時に、一番信頼できる情報は広告なのかもしれません。

 

関連書籍

"戦略PR"について興味をお持ちの方、さらに詳しく知りたい方はこちらの『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』をお読みください。日本で"戦略PR"が注目されるきっかけになった『戦略PR 空気をつくる。世論で売る。』 (アスキー新書)の著者、本田哲也氏の最新作であり、戦略PRの最前線で活躍する本田氏が世の中の情報戦略を語っています。  

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